全ての生あるものに揺るぎない愛情とそれを表現する力を持ったら…
さて、医療に携わる者にとって、あやかりたい仏像に薬師如来がある。(そんなこと誰も思ってないかな・・・)
そうなれば薬師寺や新薬師寺なのだが、法華寺を紹介したい。
法華寺には光明皇后をモデルにしたと言われる、国宝・十一面観世音菩薩像がある。
絶世の美女と言われた光明皇后がモデルなので、美しさは折り紙つきである。
この光明皇后は夫の聖武天皇とともに、興福寺五重塔、西金堂や新薬師寺を建て、国分寺や国分尼寺を立てる勅を出した。
そして何と言っても大仏を造る勅を出した。大仏は『全ての動物・全ての植物の幸せ』を祈って造られた。聖武天皇は「大きな力や富で大仏を造ってはいけない。小さな力を数限りなく集めて作らなければならない。」と言っている。大仏造営事業は当時の日本人口の半数(延べ)が携わったという。
医療従事者の私が光明皇后に惹かれるのは、光明皇后がこの法華寺に施薬院と悲田院を造ったからである。
悲田院は今で言う社会福祉施設で、親のない子や貧しい者を収容したのだそうだ。
施薬院は今で言う診療所で、蒸風呂で1000人の皮膚病患者を皇后が清めたと言う。
1000人目はハンセン病で身体中から膿が出ていた。皇后はこの患者の膿を吸い取った。
するとこの患者は実は、阿閦如来だったと言う伝説がある。
ちなみに阿閦とは「揺るぎない」という意味である。
そしてこの阿閦如来の師は大日如来である。
つまり聖武天皇と光明皇后が東大寺に作った大仏なのである。
その後の人々が皇后を慕い逢いたい一心で、この十一面観世音菩薩立像が平安時代に作られたのだという。
この法華寺のすぐそばに、これまた本当に溜息の出る美しい十一面観音がおられる。
それは海竜王寺の重文・十一面観音菩薩立像である。
これは本当に本当に本当に美しい。
ずーっと眺めてられる。
驚くべき美しさである。
鎌倉時代の作なのだが、保存状態が恐ろしく良いのだ。
ヒノキで造られてるとは思わなかった。
輝く顔に真っ赤な紅。衣や首飾りまで本当に美しい。
昭和28年まで秘仏とされていたおかげである。
この海竜王寺もまた光明皇后の御願で創建されている。
この十一面観音立像は普段は厨子内で斗帳がかけられていて、姿を拝観できない。
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