椎間板ヘルニアの医療事故で車椅子になったケース
腰椎椎間板ヘルニアの造影剤検査で医療事故に遭ってしまた患者さん。
30歳代 男性 介護福祉士
症状は頭痛、めまい、右上肢振戦、全身痙攣、腹痛、腰痛、下肢のしびれ、デジャビュなどでそれらに関わるすべての科に罹っていた。
脳神経外科:MRI、脳波異常所見なし。
内科:両腎臓萎縮あり
耳鼻科:異常所見なし
整形外科:MRI、CTにて軽度脊柱管狭窄とL4/5椎間板ヘルニア
外科:小腸通過障害なし
精神科:IQ85、脳波異常なし 頭痛、振戦、けいれんは心理的問題か・・・
以上の見解
医療事故にあった病院では、精神病扱いされこれに怒ってつい暴れてしまい強制退院となった。
2度目の病院では良いリハビリの先生と出会いリハビリを頑張っていたそうだが、私が診た時は、既に事故から7年経過していたが、車椅子状態だった。
話を聞き検査をすると、簡単にこの患者さんの話が理解できた。キャリック神経学のおかげだ。
一人の患者を多くの診療科で診て、患者の全体像を誰も把握していないようだった。
木を見て森が見えない。そういう状態だった。この患者さんはそういうことに凄く腹を立てていた。
たとえば、IQ85とあったが、右上肢の振戦が強くまともにIQテストなんてできないのだ。
すぐにプログラムを立てた。
毎日特定の方向への眼球運動と、この患者さん用にパソコン画面で見られるように視覚刺激を作った。
セラピストの行う治療と言うのは簡単に言うと、いつ、どこに、どのような刺激をどのくらいの量を入力するかである。
この患者さんには、体性感覚刺激を使わず、視覚刺激を利用した。
パソコン上にチェッカーを作り、ブロックの大きさと位置、色、コントラスト、動くスピードにより脳の左右や前頭葉や側頭葉など特定の場所に視覚からの刺激が入力されるようにデザインした。
さらに動くポインターを作り、右側の小脳にも刺激が入力されるようにデザインした。
このパソコン上で動くチェッカーとポインターを一日1~5回、1回につき5分見ておくことと、とても軽い運動を指示した。
過去に行われたリハビリは、きつすぎたと私は判断した。
神経細胞の変性が進めば、細胞は膨潤して死に至る。初期の段階では興奮しやすく、静止電位が閾値に達すると自発的な脱分極が起こる。(簡単に言うと変性した神経は興奮しやすい)
この患者さんは、少しの刺激で振戦が強くなる。
興奮しやすい状態である。
こういう時は、注意が必要である。
その神経の代謝率を超えて刺激を与えると神経細胞は死んでしまう。
グルタミン酸興奮毒性を起こしさらに悪い状態へと進む。
今までのリハビリと違い頼りないと思うだろうが、信じてやってくださいと患者さんに伝えた。
この患者さんの症状は大脳基底核の破壊症状と考えられた。
大脳基底核の破壊症状は、運動不全あるいは多動障害である。
この患者さんの場合は多動障害である。
適量の刺激を左黒室に送る事がこのケースの眼目だった。
この患者さんは信じて良く頑張ってくれた。
本人は仕事に復帰したいと強く希望していたが、身体の状態を考えほとんど絶望していた。
私は、この患者さんは介護福祉士としてのキャリアが長いので、身体を動かすばかりではなく、口を使って後進の指導などが可能ではないかと提案した。
患者さんは、その線で希望を見出せた。
2ヵ月後妹さんと、杖一本持って一人で歩けるようになった。
0コメント